空亡の書斎

力尽く限りに この夢を叶えるため 汗涙流して 道はただ一つ

2021、再スタート

 数年前、北海道の片田舎にある高校生DMPがいた。名前も無く、大きな実績も無く、綿密な交友関係もなく。ただ、「デュエルマスターズが好き」「対戦することが好き」っていう気持ちだけはあった。

 

 土日のCSにたまに出て、大抵は惨敗。時に良い結果を残すこともあったけど、今振り返ってみたって誇れるほどのものじゃない。どこにでもいる、普通のDMPだった。

 

 そんな彼は、大学受験を前にDMは引退。一年後、無事に志望校に入った。さぁDM復帰しようということになる。

 

 ここまでは良かったのだが......

 

 彼の住んでいる地域にはCSはおろか、カードショップすら満足に存在しなかったのである。

 

 彼は大いに頭を抱えた。近場で満足に競技DMをやれるような環境は無いし、彼の住んだ所のインターネット回線はかなり挙動が怪しく、当時流行のリモート対戦も出来ない惨状であった。

 

 まず必要になったのは、最低限デュエマの話ができるコミュニティ作りである。これに関しては、比較的簡単に解決できた。DM大学なるDiscordサーバーがあると聞きつけて、そこに参加することにした。

 

 名乗った名前は「空亡」。徒手空拳から「デュエマ」をやろうとする、無謀な男の挑戦がここから始まった。

 

 当時の自分にしてはデカいサーバーに入ったのはまぁまぁファインプレーだったと思う。もしTwitterだけの活動とかにしていたら、絶対にモチベは続かなかっただろうから。

 

 そこからは、まぁ色々あった。最初は黙々とデッキを作り続けて、ネタに応えることで人を集めた。何をするにも、始まりはとにかく地味だ。毒にも薬にもならないようなデッキを大量に作って、通話に積極的に参加して交流を作り、関わる人を増やしていく日々。

 

 当時は何か明確な目標があるわけでもなかったし、「何やってんだろう自分」って思うこともあった。それでも続けてきたのは、どうしようもないデュエマ好きだったからだろう。

 

 元々DMwikiのカードリストを延々と眺めて能力を憶えるようなカード馬鹿だった。僕は所謂活字中毒で、家電製品の説明書を何の意味も無いけどとりあえず全部目を通しちゃう、みたいな感じの人間である。

 

 だから、カードの話だけは人一倍できた。というか、何もない自分が売り込むにはデュエマに詳しいという要素を出していくしかなかったのである。

 

 幸い、この売名戦略は少しずつ実を結んでいってくれた。サーバー内なら少しだけ名前が広まってくれたし、ある程度人との交流もできた。正直、この点だけでDM大学には感謝してもしきれない。あそこがなきゃ、今の僕はいないだろう。

 

 そうやって繋がりを作っていった結果、自分でサーバーを持つに至る。が、自分は競技シーンにいるわけじゃない。さぁ、どうしたら自分は集まった人に還元できる?

 

 多分、一番の自己矛盾を抱えた瞬間がここだったと思う。頑張って頑張って居場所を作っていったと思ったら、肝心なそこは自分にとって行き止まりでしかなかったんだから。

 

 迷いに迷った結果、地味な作業でも少しずつ貢献していこうと入賞まとめを始めた。結果的にはこれが良い方向に作用した。集計まとめの公開でTwitterもそこそこフォロワーが増えたし、それが新しい人との繋がりを生んでくれた。

 

 僕は、デュエマが上手いわけじゃない。何も元手もなくて、本当に0から再スタートを切ってここまで来た。少しずつ、少しずつ、ひたすらに地味だけど、誰でもできることだけを積み上げてきた。

 

 それが徐々に徐々に人に認められていって、幸運なことに色んな人と繋がりを持つことが出来た。今でもCSに出て活躍している人達を見て羨ましく思うことはあるが、それでも僕にできることはこれなのだから、真っ直ぐにこれを続けるしかない。少なくとも、今はね。

 

 競技シーンにいる人々、昔の自分みたいにデュエマが好きな人に少しでも貢献できているなら、こうやって地味な活動をしている時間も無駄じゃないと思えるのだ。

 

 そうやって、少しでも自分が役に立てる場所を見つけていきたい。小さなことでも続ければ少しは人の役に立てるって、2年掛かってようやく分かったからね。

 

 奉仕気質じゃないとは前に言ったけど、結局誰かの役に立ちたいっていうのは自分の活動の根本にはあると思う。じゃなきゃ、ここ4年CSに出てない自分がCSの入賞結果をまとめても自分に何の益もないし。

 

 さぁ、今日も今日とて自分のやれることを探して行こう。